治療が難しい根分岐部病変
Periodontal Furcation Lesions
根分岐部病変とは
歯根が複数ある奥歯の歯根と、歯根が分岐した部分を根分岐部と言います。
その根分岐部に細菌感染が起こり、歯の周りの骨が吸収して無くなる病気を根分岐部病変と言います。原因は歯周病や虫歯、歯髄疾患、歯根の亀裂・破折、パーフォレーション(何らかの原因で歯に穴があいた状態)などです。
根分岐部は、複雑な解剖学特徴を持つことから、根分岐部病変は他の部位の歯周炎よりも、進行が早く治りにくいと言われています。また、年齢が高いほど、根分岐部病変が進行している傾向にあり、男性に発症が多いという報告があります。
根分岐部病変の分類と主な治療法
LindheとNymanの分類(1975)
種類 | 症状 |
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1度(初期) | 根分岐部にプローブ(歯周ポケット測定器具)は入るが、歯の幅の1/3以内 |
2度(部分期) | 根分岐部にプローブが1/3以上入るが貫通はしない |
3度(全体期) | 根分岐部にプローブを入れると貫通する |
根分岐部病変の主な治療法(LindheとNymanの分類を基準)
上顎大臼歯
種類 | 症状 |
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1度(初期) | スケーリング・ルートプレーニング、咬合調整(噛み合わせの調整)、切除療法、歯周組織再生療法 |
2度(部分期) | スケーリング・ルートプレーニング、咬合調整、切除療法、歯周組織再生療法、ルートリセクション、抜歯 |
3度(全体期) | ルートリセクション、抜歯 |
下顎大臼歯
種類 | 症状 |
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1度(初期) | スケーリング・ルートプレーニング、咬合調整、切除療法、歯周組織再生療法 |
2度(部分期) | スケーリング・ルートプレーニング、咬合調整、切除療法、ルートリセクション、ルートセパレーション、トンネリング、歯周組織再生療法、抜歯 |
3度(全体期) | スケーリング・ルートプレーニング、咬合調整、ルートリセクション、ルートセパレーション(歯根分割)、トンネリング、抜歯 |
用語説明
スケーリング
歯石除去。スケーラーという器具を使用し、歯面に沈着したプラーク(歯垢)、歯石そのほかの歯面沈着物を機械的に除去すること。
ルートプレーニング
歯根に付着した歯石や感染したセメント質をスケーラーで削り取り、歯根の表面をきれいにすること。歯根に付着した歯石は歯周病の原因となることがあるため、ルートプレーニングを行い歯根に付着した歯石をきれいに取り除けば、歯周病の進行を抑制し、改善させることができます。
根分岐部病変のメンテナンス
根分岐部病変は、治療が難しい上に再発しやすい病気です
根分岐部病変の生じる奥歯は、ただでさえ磨きにくい部位ですが、治療後の歯の形態は歯根が露出してさらに複雑さを増し、プラークコントロールが困難となります。したがって、良好な予後、寿命を長くするためには、定期的なメンテナンスと徹底したホームケアが不可欠です。
また、歯周ポケットが深くなり、根分岐部病変が再発してきても、かなり進行しなければ自覚症状は出にくく、気づかないうちに悪化していきます。痛くなくてもメンテナンスは受けましょう。メンテナンスでは、咬み合わせの調整を行います。治療歯に過度の咬合力がかかると歯が破折し、抜歯となります。
特に、リセッション(歯根を抜去)した歯が抜歯となる原因の多くは破折です。仮に、プラークコントロールが非常に上手でも、歯の咬み合わせがアンバランスだと、治療歯が破れてしまうこともあります。歯の噛み合わせは日々変化しますので、メンテナンスは必要なのです。
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歯周病治療の注意事項(リスク・副作用など)
- 外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
- 歯周組織再生治療は患者様の状態によって術後の経過が異なります(見た目が改善しない場合もあります)
- 歯周組織再生治療は自費診療(保険適用外)となります