歯周病とは
下記の中で、思い当たる症状はございませんか?
- 歯ぐきが腫れ出血する
- 歯ぐきが後退している
- 口臭がある
歯周病は歯肉や骨が細菌に冒される病気です
歯周病は、プラーク(歯垢)が歯石となり歯ぐきの炎症、歯肉炎(出血)を引き起こし、放置するとどんどん進行していきます。
また、歯周病の進行具合は初期、中程度、重度に分けられますが、進行するにつれて、歯を支えている歯槽骨が溶ける骨吸収が起きて、次第に歯がぐらついてきます。歯周病が進むと、歯を支えることができなくなり、最終的には歯を抜かざるを得なくなります。
歯周病の原因
慢性歯周炎
歯周病といっても、実は様々な種類の歯周病があり、いろいろな形で分類されています。これらの中には、全身的な疾患(遺伝性疾患、血液疾患等)に伴い発症する稀なものや、未だに原因がよくわかっていない急激に進行する歯周病、また、薬物の服用や妊娠といった特定の条件下に発症するような歯周病など、実に様々な病態が存在します。
歯科医師が日常的に扱う歯周病は、こういった様々な病態の中で「慢性歯周炎」と表現されるもので、生活習慣病としての歯周病もこの「慢性歯周炎」です。
慢性歯周炎は「継続的に歯ぐきや歯を支える骨の周囲に炎症が生じている状態」と言い換えることができるでしょう。つまり歯周病の根本的な病態は炎症です。歯周病の原因は、この炎症を引き起こすものになります。
歯周病の治療法
歯周病の治療には、歯石除去、細菌減少、再生治療などがあります
- 歯石除去
- 細菌減少(レーザー治療)
- 歯ぐきと骨の再生治療(歯周外科療法)
初期段階であれば、歯石を除去したり、細菌を減少させたりすることで治る場合もあります。しかし、進行した歯周病の場合は、歯石除去や細菌減少だけでは治らないケースが多くあります。進行した歯周病(歯周ポケット深さ4mm以上)の場合は、レーザー治療で細菌を減少させても、その効果は長くて数ヶ月程度です。
また、スケーリングなどの方法で歯石を除去しても、歯石を取り残してしまうケースが多いという研究報告もあります。つまり、細菌減少、歯石除去ができても、歯周ポケットが深いままだと、また細菌が増え、歯石も形成されてしまうのです。
歯周病の有効な治療法としては「マイクロスコープを使用した歯ぐきと骨の再生治療」があります。歯周ポケットを健康な状態(深さ2mm以下)に戻すことが可能な治療法です。
歯ぐきと骨の再生治療(精密歯周外科療法)
歯ぐきと骨の再生治療(精密歯周外科療法)とは、マイクロスコープや拡大鏡を使用した歯周病の外科治療です。進行状況や症状によって治療法が異なります。
歯槽骨再生治療
患部の歯肉を切開し、歯の根を徹底的に清掃した後、特殊ジェルを塗布し、骨補填材を充填します。
歯ぐき移植術
上顎歯肉を採取し、患部(露出してしまった歯根)に移植します。
歯槽骨整形術
患部の歯肉を切開し、歯の根を徹底的に清掃した後、デコボコになった歯槽骨を滑らかにします。
歯周再生治療のメリット・デメリット
- メリット
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- 歯周病が完治
- 歯を抜かずに残すことが可能
- 歯周病の再発防止
- 虫歯予防
- 歯ぐきの若返り
- 歯が長持ち
- しっかりと咬める
- デメリット
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- 外科手術
- 手術後は違和感がある
- 自費診療
歯周病治療(再生治療)の流れ
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- カウンセリング
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歯や歯ぐきの確認、治療スケジュール、治療法、治療期間、治療費などについてご説明します。
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- 精密検査~コンサルティング
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レントゲンや専用器具を使って歯周ポケットを調べます。また歯のゆれ、咬み合わせ、歯ぐきの厚み、炎症なども確認します。その分析をした上で最適な治療方法をご提案いたします。
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- 初期治療
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スケーリング(歯石除去)、ルートプレーニング(歯周ポケット深くの歯石を除去)、ブラッシング指導などを行います。
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- 再評価と検査
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歯周ポケットが2mm以内に回復していれば治療終了です。歯周ポケットが4mm以上の場合は精密歯周外科療法を行います。
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- 再生治療(精密歯周外科療法)
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症状によって、歯周組織再生治療(エムドゲイン、骨補填剤)、歯ぐき移植術、歯槽骨整形術を行います。
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- 再評価と検査~メインテナンス
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歯周ポケットが2mm以内に回復していれば治療終了です。治療後は、定期健診で経過を観察していきます。
歯周病の検査項目
- 骨の状態を調べるための細かいレントゲン撮影
- 器具で歯周ポケットの長さ確認
- 歯のゆれ、咬み合わせの確認
- 歯ぐきの厚みや炎症を確認
- 歯ぐきの腫れや清掃性を写真で確認
- 歯垢を染め出してブラッシングの確認
歯周病の進行段階と症状
歯周病も病気と同じように、進行段階によって症状が異なります。歯周病を引き起こしている炎症の原因は、歯周病の重症度によって変化します。
- 歯肉炎
- 軽度の歯周炎
- 中等度の歯周炎
- 重度の歯周病
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歯周炎の前段階のような状態。歯ブラシがよくできていないことにより、歯と歯ぐきの間の溝に汚れがたまり炎症が起きます。これは汚れの中で細菌が繁殖するためです。適切な歯ブラシで歯の周りを清潔にすることで改善することができます。
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歯肉炎の状態がしばらく続くと、炎症の範囲がだんだんと深くなります。歯を支える骨にまで炎症が波及すると大変なので、防御反応として骨は炎症から逃げるように退縮し始めます。これが歯周病における「歯を支える骨が溶ける」と呼ばれる状態です。
このように、炎症の影響が骨にまで及んだ段階から歯周炎となります。
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歯周炎を放置すると、骨はどんどん溶けていきます。すると、さらに歯と歯ぐきの間の溝は深くなり、汚れもたまっていきます。深い溝の中の汚れは、なかなか掃除できないため、歯石が付着し、その歯石にまた汚れがたまり...と悪循環が始まります。
このような状態になると、歯の周りでは細菌がバイオフィルムという特殊な環境を形成して、さらに繁殖し、毒素を放出します。
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重度の歯周病になると、歯の周りには歯石とバイオフィルムがべったりと付着し、周りの歯ぐきは炎症性の組織に浸食されます。細菌が出す毒素や、毒素に対する免疫応答により、炎症は強くなり、当然歯を支える骨はかなり溶けてしまい、細菌はさらに活発になります。そして、炎症性の組織が増殖するように骨が溶けてできたスペースを埋めていくのです。
このように歯周病は、重症化するにつれ、原因となる症状が上乗せされていきます。いずれにせよ、歯周病は最初の些細な磨き残しから始まり、それを放置することで細菌が増殖し、どんどん重症化していきます。つまり、日々の歯ブラシが非常に大切だということがわかります。
歯周病は感染症です
歯周病は、歯周病菌による感染症で血管・リンパ管を通じて全身に移動し、心筋梗塞・脳梗塞などの循環器の疾患のリスクや糖尿病の血糖値を高めます。また、低体重児出産となる確率を高めると言われ、家族間で感染することがあります。
歯周病を放置すると骨が吸収
歯ぐきの腫れる病気と思われている方が多いのですが、本当に問題なのは、骨が吸収してしまうことです。歯周病にかかると顎の骨が無くなってしまいます。
右の写真を見ると、骨が少なくなっているのがわかるかと思います。写真のように支える骨が無くなると歯が動くようになり、さらに進行すると抜けてしまいます。いったん骨が吸収してしまうと、元に戻すことは非常に困難です。歯石を取り除くだけでは骨は元には戻りません。
歯周病も早期発見・早期治療を
歯周病は、進行してしまうと骨が吸収してしまうので、元に戻すことはできません。進行してしまうと歯肉の手術により細菌を取り除く必要があり、処置がどんどん難しくなります。歯周病にならないよう予防することが大切です。
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歯周病治療の注意事項(リスク・副作用など)
- 外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
- 歯周組織再生治療は患者様の状態によって術後の経過が異なります(見た目が改善しない場合もあります)
- 歯周組織再生治療は自費診療(保険適用外)となります