歯がなくなってしまった時の治療
Treatment For Missing Teeth
歯がなくなってしまった時の治療
最近は治療の選択肢も広がり、一昔前だったら抜歯されていたような歯も残す努力ができるようになってきました。どんなに治療が進歩しても、自分の歯に勝るものはないでしょう。ですから私たちも、なるべく歯は残すような治療をしていきたいと考えています。
しかし、重度の歯周病や深い虫歯により、どうしてもその歯を残すことができず抜歯となってしまうこともあります。これは、歯を抜くことが治療として最良の方法だと判断した時の選択肢なのです。では、歯を抜いた後はどのような処置をしていくことになるのでしょうか。
少し大げさな話になってしまいますが、足を失ってしまった人を想像してみてください。車いすで生活する人もいれば、義足をつけてパラリンピックに出場する人もいます。失った体の一部を補うというのは「病気を治す」こととは少し違います。あくまで、その人の生活にあわせて、その質を向上させるために行うことなのです。歯も体の一部であり、失った後に何らかの処置をするかどうか、どのような方法で処置をするのか、それはその人のライフスタイルや価値観を鑑みて決めていかなければなりません。
歯がなくなってしまった時の選択肢としては、以下のものがあります。それぞれにメリットとデメリットがあり、症例に応じてどれを選択するか、患者様と相談して決めていきます。
保険治療
- 一般的な入れ歯
- 金属のブリッジ
- プラスチックのブリッジ
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おそらく患者様が「入れ歯」と聞いて想像するものがこれでしょう。取り外し式で、金具を他の歯に引っかけて安定させます。
咬み合わせの効率としては最も悪く、金具が他の歯に負担をかけますし、毎日入れ歯を洗浄してあげる煩わしさがあります。
また、保険治療では設計に制限があり、丈夫で安定の良い入れ歯をつくるのは困難です。
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ブリッジとは、無くなった部分の両隣の歯を土台としてダミーの歯を橋渡しにする方法です。保険治療の場合、前から4番目以降は「奥歯」の扱いとなり、奥歯には金属しか使えません。
従って、奥歯を失ってしまった場合、金属のブリッジが適用となります。広範囲が金属になるため、非常に見た目が悪いですし、保険で使用できる金属は酸化しやすく、2次的な虫歯や歯周病のリスクになりやすいと言えます。
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前歯の場合、保険内でも白い材料を使うことができます。これは金属のフレームの上にプラスチック(レジン)を貼り付けて作られます。前から3番目、つまり糸切歯まではこの方法が適用されます。
内側には奥歯の時と同様の金属が使われるため、2次的な虫歯や歯周病のリスクになりやすいですし、表面のプラスチックは変色したり、すり減ったりと、長期的にみると審美的にも見劣りします。
自費治療
- セラミックのブリッジ
- インプラント
- 自費診療の入れ歯
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自費治療でブリッジを行う場合、奥歯であっても前歯であっても、セラミックでより美しく、自然に咬み合わせを回復することができます。
セラミックは見た目が美しいだけではなく、汚れや傷がつきづらく、変色したりすることもありません。また非常に硬いため、ほとんどすり減ることもなく、長く使うことができます。
製作時の様々な工程でこだわりを持って処置するため、歯だけではなく、周りの歯茎などの健康も考えた、本当の意味で美しい被せ物をめざしています。
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歯が無くってしまった部分に人工の歯を埋め込む、それがまさにインプラント治療です。人工の歯といっても、なかなか想像が難しいと思いますが、実際には骨の中に埋まっている部分をインプラントというので、人工歯根というのが正しいでしょう。
実物はチタンでできたねじのようなものです。チタンは骨と結合する性質があるので、このチタン製のねじを顎の骨のなかに埋め込み、その上にかぶせものを製作することで咬み合わせを回復させます。
インプラント治療の最大のメリットは、ブリッジのように他の歯を削る必要がないこと、もう一つは、様々な選択肢の中で最も咬み合わせを回復する能力が高いことです。ただし、骨の中にねじを埋め込むわけですから、誰でも簡単に行えるわけではありません。骨の幅や高さ、健康状態など、ある程度適用できる条件が絞られますので慎重な診査が重要です。
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保険治療と同様、取り外し式で毎日のお手入れが必要になりますが、フレームとなる金属の材質を自由に選べます。例えば白金加金で金具とフレームを一体として作ることで、しなやかで丈夫な入れ歯をつくることができます。特に上の総入れ歯などでは、金属を使うことで天井部分を薄くすることができ、より違和感が少なく、温度感覚に優れた入れ歯を作ることができます。さらにチタンを使用すれば、さらに軽く、落ちづらくすることもできます。
保険治療との一番の違いは設計が自由なことです。例えば、保険内の入れ歯をよく見ると、中に細い金属が途切れ途切れに入っているだけで、この金属と金属の境目などが、よく割れてしまいます。自費の入れ歯は、この金属をすべて一体構造でつくることができますので、非常に丈夫で安定性も高まります。
さらに、マグネット(磁石)など特殊な装置を併用することにより、入れ歯を安定させることもできます。残った歯に装置をかけなければならなかった入れ歯が、磁力によって安定するため、より負担の少ない入れ歯となります。
何もしない
歯が抜けたまま放置しておくリスク
歯がなくなったままにしておくと、様々な問題がでてきてしまうのも事実です。具体的にどのような問題があるでしょうか。
以下のような事柄が挙げられます。
- 咬み合わせの効率が低下する
- なくなった部分に隣の歯が倒れこんでくる
- なくなった部分に反対側の歯が伸び出てくる
- 周りの歯が動くことで歯並びが悪くなる
- 歯並びが悪くなることにより、咬み合わせに異常がでる
- 咬み合わせの負荷がなくなることにより、なくなった部分の顎の骨が細くなる
- 咬み合わせの減少によって他の歯の負担が過剰になる
- 他の歯の負担過剰が続くと、さらなる歯並び・咬み合わせの異常がでる
このように、歯が無い状態を放置すると、その部分だけではなくお口の中全体に悪影響が波及してしまうのです。失った歯の本数が多いほど、このような弊害も大きくなるでしょう。
やはり、歯がなくなってしまった後は、何らかの方法でそこを補い、咬み合わせを回復してあげるのが望ましいことがわかります。
失った歯を回復する方法は、入れ歯・ブリッジ・インプラントのいずれかを選択していくことになります。保険治療、自費治療により適用できる方法に違いがありますので、症例・予算に応じて最適な方法をご提案させていただきます。
インプラント治療は高額医療費控除の対象
日本では平成24年4月から、特定の状況下において歯科インプラント治療が先進医療として保険適応されています。これはインプラント義歯のみになりますので、インプラントを支えにした入れ歯となります。では保険の適応となるのはどういった状況なのでしょう。それは、
- 腫瘍や顎骨骨髄炎などの病気や事故の外傷によって、顎骨の1/3以上が連続して欠損している場合
- 保健医療機関の主治医によって先天性疾患と診断され、顎骨の1/3以上が連続して欠損している場合
- 顎の骨の形成不全である場合(歯周病や加齢による骨吸収を除く)
となります。
また、先進医療を行える施設は国によって定められており、大学病院や総合病院といった大きな病院でのみ行えます。
まとめると、通常の入れ歯を入れることができる方は対象外であるということです。見た目の問題で入れ歯を入れたくない、咬みにくいので入れ歯を入れたくないといった理由では保険のインプラントは行えないということになります。ですが、インプラント費用を安くする方法は存在します。それは高額医療費控除です。
インプラントは医療になりますので、高額医療費控除を受けることができます。年収にもよりますが、確定申告の際に申請することで費用の2~3割は戻ってくることになります。額面の値段よりも結果的に安く治療を行うことができますので、詳しくは「医療費控除ページ」を参考にしてください。
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インプラント治療の注意事項(リスク・副作用など)
- 外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
- メンテナンスを怠ったり喫煙により、お口の中に大きな悪影響を及ぼすインプラント周囲炎等にかかる可能性があります
- 糖尿病、肝硬変、心臓病等の場合、インプラント治療ができない可能性があります
- 高血圧、貧血・不整脈等の場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります
- 自費診療(保険適用外治療)となります