インプラントを長持ちさせるために重要な点
Important Points About Implant
インプラントを長持ちさせるための注意点
歯が失われたまま放置すると、咬み合わせのバランスが崩れて咬みづらくなるだけではなく、咬み合う歯が伸び出てきたり、奥の歯が倒れてきたりすることで、さらに咬み合わせが狂ってしまいます。咬み合わせのズレによって背骨がゆがみ、頭痛や肩こりをはじめ、様々な身体症状を引き起こすことがわかっています。こうした身体症状を防ぐためには、失われた歯を再建することが非常に重要となります。
ブリッジと入れ歯は、失われた歯の咬み合わせの力を両隣の歯に負荷を与えます。そのため、弱った両隣の歯に被せ物や入れ歯治療を行うことも少なくありません。こうしてブリッジや入れ歯の範囲が少しずつ広がり、やがてすべて天然歯が失われ、咬みづらくなっていきます。
それに対してインプラントは、両隣の歯に負担をかけないことが大きな利点です。むしろ、失った歯を取り戻し、さらに両隣の歯の寿命を延ばしてくれる救世主のような存在と言えるでしょう。
インプラントの寿命は10年残存率が90%以上と言われています。ブリッジは7~8年、入れ歯は4~5年であることと比較すると、インプラントは長く使っていくことのできる治療法です。インプラントの寿命を延ばす、さらに半永久的にするためには、重要な幾つかの注意点があります。そうすることで10年以上の残存率を獲得することができます。
注意点①:手術が『健康な口腔内環境に』『適切な位置に』『正確で緻密に』施されている
インプラントは虫歯にはなりませんが、歯周病と同じようにインプラントの周りの骨を溶かしてしまうインプラント周囲炎を発症する可能性があります。歯磨きが不十分だったり、周りの歯が歯周病だったりすると、インプラントがインプラント周囲炎になる危険性が高まります。日頃からプラークコントロールを良好に保ち、お口全体が歯周病のコントロールができている健康な状態であることが大切です。
そして、本来歯があるべき適切な位置に、正確で緻密にインプラントが殖立されることがインプラントの寿命を延ばす要素です。骨が足りないところには、骨を増やす治療をした上でインプラントを行います。それができない場合は、インプラントをしないという選択をすることになります。骨かないところにインプラントをするよりも、十分骨があるところにインプラントをした方がインプラントの寿命を伸ばすことができます。その方法にはいくつか種類があります。
GBR(骨誘導再生)
チタンのメッシュプレートを用いて行う方法です。抜歯や歯周病の場所の骨が著しく吸収しているところに骨を増やす処置です。半年以上の治癒期間を待って骨ができてくるのを確認してからインプラントの埋入を行います。
サイナスリフト
上顎骨の臼歯部(上顎洞)の骨は、無いことが多く、そのような場合は上顎洞粘膜を挙上し、その空洞に骨(自家骨や人工骨)を入れて骨を造成します。オステオトームという器具を使用するソケットリフト法を併用すると、安全な挙上を行うことができます。
注意点②:実績と安全性の高いインプラントを選択する
インプラントには様々な種類があり、その中でも実績のあるメーカーが最も信頼のおけるインプラントということができます。
注意点③:理想的で適合性の高い被せ物を使用する
被せ物が精密に合っていないと、汚れが溜まりやすくなったり、咬みにくかったり違和感を生じます。汚れが溜まると歯周病になりますし、噛み合わせがうまくいかないと、インプラントに不適切な力が加わり、インプラントの寿命を短くしてしまう一因となります。
インプラントは過度な力が加わると、インプラントの周囲の骨をなくしてしまう可能性があります。それもまたインプラントの寿命を短くしてしまう要因です。自分の歯や被せ物の歯は、使えば必ず擦り減り、噛み合わせが変化するためインプラント部に過度な力が加わることがあります。それを避けるためには、定期的に全体のバランスを見て調整する必要があります。
この他に歯ぎしりも過度な力がかかる要因です。歯ぎしりが強い人は、自分の歯や被せ物に大きなダメージを与え、歯をぐらつかせたり、歯や被せ物を破折したりすることがあります。インプラントは、特に歯ぎしりのような横からの力に弱いため、しっかりとした調整、歯ぎしりを防止するマウスピースが必要になります。
歯ぎしりは睡眠中に多くみられます。たとえ数分の歯ぎしりでも、横の力が加わるためマウスピースが必要になります。
注意点④:定期的なメンテナンスを実施する
インプラントやその他の歯に問題がないか、定期的に点検することは非常に重要です。車も定期点検や車検を行うことで、長い間安心して乗ることができるのです。インプラントであっても歯周病になりますので、定期的にクリーニングを行って健康な歯周組織を維持する必要があります。
メンテナンス時には、クリーニングのほか、インプラント部に異常がないかチェック(被せ物の状態、ネジが緩み、歯周病の有無等)をします。インプラントは動かないものですが、歯は日々の体調と共に微量に動いていますので、咬み合わせの調整も行います。定期的に咬み合わせを調整してバランスを保つことが重要です。周りの歯が動いて圧力が増し、インプラントへの負荷が高まることもあるからです。
注意点⑤:ホームケアを怠らない
定期的にメンテナンスを受けていたとしても、毎日のブラッシングができていなければ元も子もありません。インプラント自体は虫歯にはなりませんが、その周りの歯ぐきは歯周病になります。歯を失った時の気持ちを思い出して、毎日丁寧にブラッシングを行ってください。天然歯と同じように、しっかりとケアとメンテナンスを継続すれば、インプラントの寿命はより長くすることができます。
しかし、ブラッシングが不適切、または不足するとインプラントの寿命は短くなります。自分の歯と違いインプラント自体はいくら汚れても虫歯になることはありません。しかし、汚れることによって、インプラント周囲に細菌が増殖し、その細菌が毒素をだして骨を溶かしてしまいインプラント周囲炎(インプラントの歯周病)になってしまいます。
しっかりとしたセルフブラッシングが必要になります。歯周病は、ご自身の歯磨きだけでは防ぐことができません。ご自身が苦手とするブラッシング部位や磨きにくい歯と歯肉の境目(歯周ポケット)の汚れや、それ以外の磨き残し、こういった場所に繁殖した細菌をきれいにすることが大切です。これはインプラントでも同じことが言えます。
また、食生活や喫煙、全身の健康管理も重要な要素です。喫煙や糖尿病は、歯周病の立派なリスクファクターです。全身の健康が歯の健康に繋がり、逆もまた然りです。糖尿病疾患の方は、免疫力が低下し、歯周病や虫歯になりやすくなります。もちろんインプラント周囲炎にも罹患しやすくなります。したがって全身管理は、インプラントの寿命を伸ばすためにも、とても重要なのです。
喫煙は血行を悪化させ、歯周病に感染しやすくするほか、インプラントと骨との結合を阻害することもあります。インプラント治療の前後には、禁煙が必要になります。インプラントにも天然歯にも、タバコは悪影響しかありません。インプラント治療をお考えならば、喫煙や減煙に取り組む必要があります。
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インプラント治療の注意事項(リスク・副作用など)
- 外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
- メンテナンスを怠ったり喫煙により、お口の中に大きな悪影響を及ぼすインプラント周囲炎等にかかる可能性があります
- 糖尿病、肝硬変、心臓病等の場合、インプラント治療ができない可能性があります
- 高血圧、貧血・不整脈等の場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります
- 自費診療(保険適用外治療)となります